詩集 詩悪魔 ―Daimon Poiesis―
未済



『未済』


もうなにも求められない
崇高さも光も
神聖さも道も
持たないものがない
求める意味がない
失うものがない
持ってるものもない
すべてが諦められた

愛がない
自由だ
自由もない
愛しかない
ひどいな
悪魔さえ幻なのか
僕は幻術など使えない
この静けさはなんだ
だが今夜もし続けるんだろう
終わらない手淫
衝動が動機だ
衝動はいつまで存在するんだろう
いや、動機こそいつまで?
衝動がほったらかされ
僕は眺めるだけ…
じゃあ、今と変わらない

だがひとつだけ叶ったことがある
求めないということは
誰からも求められないということだ
叶ったその自分の無価値さが
次の動機になりうる
僕はそれを嘆くのだろうか
絶望的だろうな
想像に過ぎないけど
またその動機が悪魔の再生を促す

(まだ歌いたいか?)

幻のはずの悪魔が
ゆっくりと質量を帯びて甦ってくる
手首の鎖が幽かに鳴ったような幻聴
まだそれは不確かな予感だけの音
紡ぎ出す言葉は一度遠ざかる
さようなら
またいつか逢おう
僕が呟いたのか
悪魔が囁いたのか
誰に言うともなく
闇にまぎれる言葉で
















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