蒙古斑
馬鹿な人達
「オーディションだぁ」
 俺は声を上げた。

「そっ、雅夫の可愛い娘の写真を送ったら、ぜひ会って審査したいって返事が来たのよ」

 俺は胡散臭げに、隣家の爆走娘、渚を見つめた。

 容姿は二十歳を過ぎてるとは思えない小柄で、可愛くない性格だが可愛い顔の女で、パーマっ気のない髪は最近まで腰辺りまであったが、初手料理中にコンロで焦がしたとかで肩の長さまで切ってしまっている。
 話には聞くが、実際コンロで髪を焦がす人間を見られるとは思わなかったが、こいつならさもありなんだ。

「・・・・何のオーディションなんだ」
 俺は慎重に訊いた。

 こいつとは付き合いが長く、性格も知りすぎている。
 だからこそ、こいつに惚れることなく過ごしてきた。

 こいつは俺に惚れてたらしいが、俺の嫁さんに気迫負けしたと言って、諦めたらしい。
 いや、女が男を諦めるのには、自分が適わないと思う女が有効らしい。
 適わない事を解らない女はどうしょうもないが、

 その点だけは、渚はいい女だ、と思った。

 兎に角渚は、普通が嫌いと言う口癖の持ち主だった。

 普通が嫌いと言っても常識はずれなことは、多分、していないと思うが、それでも世間様よりかなりずれている。

「お尻のオーディション」
「はぁ?」
「お尻、雅夫の赤ちゃん蒙古斑がお尻じゃなくて、足にあるでしょう、
 だから、これはチャンスって思ったの」
「何がチャンスだ?」

「テレビでさー、オムツのコマーシャルとかの赤ちゃんのお尻、綺麗でしょう、
 蒙古斑目立たないように処理しているのよ」

 こいつはどっからそういう知識を仕入れてくるのか・・・・。
「それで人ンちの可愛い娘のお尻を全国に放映させろってか?」

「赤ちゃんの時にしかできないことをするのよ、大きくなったら、
 私はお尻のモデルをやりましたって言えたら、素晴らしいじゃない。
 今、大学や就職の面接で、かくし芸を求めるこがあるじゃない、将来、絶対有利になるって。
 ねぇ、ねぇ、どう?」

「おい、ケツの話より顔はどうした、顔は?」

「無理よ、世の中顔だけは妙に可愛い赤ちゃんが五万といるもの。
 近所づきあいの私の欲目で言っても雅夫の赤ちゃんの顔は奇妙な顔だし」

「お前、殺されたくなかったらもう夕飯時に来るな」
「毒でも盛る気?」

 真面目に訊き返すな、とうろんな目付きをしてやる。
 新婚家庭で可愛い娘のある父がそんな馬鹿な真似できるわけないだろう。
「怒りの度合いを示しただけだ、兎に角、そんなオーディションはお断りだ」

「モデル料はいいと思うけど・・・」

「・・・男の子ができたら考える」
 俺も馬鹿、かもしれない・・・・。


おしまい
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