雪の花びら


(出来ない約束か…。)

夢の中の気持ちは俺の雪嫌いの理由に似ていた。
と、言うか昨日の白昼夢も似ていた。

大切な人と一緒に居られない。

(偶然じゃないのか…?)

今、実際、大切な人に逢えていない。
逢えなくなってから気付いたけど、朝日奈さんの存在が俺の中で大きい。
逢えないから伝える事も出来ないけど。

そもそも…。
親がこんな名前を俺につけるから悪いんじゃないのか…。

だいたい小学生くらいで自分の名前の由来を調べる。
俺だって調べた。
母さんが付けたって言って話してくれた。
昔はよく意味が解らなかったけど、今なら解る。

義高。
木曾の義高。

歴史上、教科書に大きく載るほどでもない。
木曾の義仲の長男の名前。
戦を防ぐために人質として婿に入った人。
そして結局殺された人。

なんだってそんな哀しい想いをした人の名前にするんだよ。
好きな人と逢えなくなったらどうしてくれるんだよ。
…なんてただの八つ当たりだけど。

けど、今、見ていた夢はそれに似ていた。
着物だったし。

似てるけど…非科学的だ。

だいたい朝日奈さんが¨大姫¨ってわけでもない。
生まれ変わりが存在するとは考え難い。
俺の名前だって偶然の産物だし。

「はぁ…。」

結局何とも言えない感情のまま、支度をして大学に足を運んだ…。



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