雪の花びら
―コンコン。
「あ…。」
桜に魅入っていると、春野君が窓を叩いていた。
慌てて開けると彼は笑顔を見せた。
「気持ち悪いの無くなりました?」
「うん。」
「良かった。」
彼は私の返事を聴いてまた笑う。
「だけど、どうして…?」
「…約束したから。」
「…え?」
春野君の一瞬した寂しそうな顔が、夢で見ていた大切な人と被る。
そんなはず…ないのに。
「ま、本物じゃないですけど、この桜。」
春野君の言葉に周りに落ちた桜を見ると、それはピンクの和紙を千切ったものだった。
「春になったら二人で本物の桜、見に行きましょう。」
そう言って彼は少し照れたように笑った。