雪の花びら


「今は大丈夫ですか?」

少し間が開いて、春野君はもう一度私に聴いた。

「うん。大丈夫。珍しく、今日は。」

「良かった。」

彼の不安そうな顔はパッと笑顔になった。
本当によく笑う人。
優しい顔で。

彼の第一印象はそんな感じだった。


「到着ですね。」

家の前に着くと春野君はピタッと止まって笑顔を見せた。

「うん。ありがとう。」

「どういたしまして。では。」

「春野君も気をつけてね。」

「はい。」

そう言って笑顔のまま、元来た道を彼は歩いて行った。
彼が角を曲がったのを見届けて私も家に入った。


            *


その夜は、不思議な夢を見た。

雪の嫌いな私が、雪の中で誰かと一緒に寝転がって降る雪を見つめていた。
しかも、何故か着物を着ていて。
二人で降る雪を見ている間、とても幸せだった。


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