鳥かごと処女
元居た時代で最後に触ったのは、あの古い血のついた鳥かごだ。
何処にあるのかは分からないが、探してみれば何か分かるかもしれない。

藁にもすがる思いだった。
友人たちとの時間を大切にしたいと思いながらも、帰りたい気持ちは止められない。

雑巾を持つ手に、力が入る。

気の良い彼らをこれ以上だましていたくない。
だが、本当の事を言って、信じてもらえるのだろうかという、不安。

亮一郎は掃除を終え、牧師を探した。
広くない教会の中、礼拝堂で彼はすぐに見つかる。
(話してもいいか、相談してみよう。)
牧師に駄目だと言われたら、諦めが付く気がした。

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