鳥かごと処女
少し寂しい気もしたが、全て話すと決めたのだから、仕方が無い。

「ああ。心当たりは、ないか?」

「・・・なんともいえない。そんな大きな鳥かごなら、この小さな村ですぐ噂に
なるだろう。」

腕を組んで、唸る。
もしかしたらと期待していた亮一郎は、少しだけガッカリした。

「すまない、力になれなくて。」


申し訳なさそうな、さびしそうな。


セードルフの表情は、複雑だった。
表情以上に、心境も複雑だ。


せっかく、同世代の友人が出来て、仲良くなれたと思ったのに。

彼は、目の前からいなくなってしまうばかりでなく、生きているうちには再会出来そうにない。



(これが、神の御心なら・・・残酷だ。)



心の中で、祈りを捧げる。

亮一郎が、無事に元の時代に帰れますように。
そして、願わくば。



(俺達の事を、忘れないでくれ。)


奇しくも、2人は同じことを思った。


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