鳥かごと処女
どうやってそれを伝えていいものか悩んでいると、亮一郎が眉間にしわを寄せたまま腕を組んで短く息を吐きだした。

「レヴェンテは、納得したのか?」

弟想いの彼女の事だ。
おそらく弟の為にと、城へ上がる決意をしたのだろう。
他人の気持ちを汲み取るのは苦手ではあるものの、それぐらいは分かる。
悩んだ末に決めた事だとは思ったが、確認せずにはいられない。

「ええ。レヴェンテは私が城に上がらないのは、自分が幼いせいだと思っていたみたいで・・・。」

城に上がれば、今よりはるかに良い生活が出来る。
そう信じているレヴェンテに、今まで勧誘があった後は幾度となく行かなくても
いいのかと聞かれてきた。
だからこの決意をした時、一番喜んだのはレヴェンテなのだ。

もちろん、彼は自分の絵の為に姉が奉公にあがるとは知らされていない。
知らなくていい。
もし自分が本当に流行り病に倒れても、罪悪感を感じずに済むだろうから。

「そうか・・・。」

「明日の朝、早くに迎えが来るの。だから、どうしても今日伝えておきたくて。」

少し寂しそうに微笑むエメシェに、亮一郎はぐっと胸を掴まれたような気分になる。
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