鳥かごと処女
体が勝手に走り出したと言ってもいい。
運動が得意な方ではないから、そんなに速くはないが、木の枝や葉がむき出しの顔に当たって、小さな傷をいくつも作った。

(なんなんだよ・・・どこだよここ!!)

混乱して、生理的な涙が出る。
それをぬぐうこともせず、とにかく走った。

走って、走って、走っても、人の灯りは見えない。
足はもう、動かなくなった。
こんなに走ったのは、マラソン大会以来だ。
上がる息を何とか整えても、恐怖は消えなかった。
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