鳥かごと処女
また、夜が来た。

精一杯明るく振る舞うセードルフだったが、エメシェのことでかなり落ち込んでいた。
好意を伝えたわけではなさそうだが、いつ、任期が明けるか分からないので、しばらくは会えないからだろう。
ため息こそ隠しているが、背中が寂しい。

まだ帰らない牧師の分も、いつもの質素な、しかし精一杯の夕食を用意して、テーブルにつく。
暖炉の火は細々と燃え、時折パチンと木がはぜる。

「そろそろ食べよう。」

亮一郎が声をかけると、曇った窓から真っ暗な外を見ていたセードルフが振り向いた。
燃料の節約のせいで、街は暗い。

のそのそとテーブルについたセードルフと共に、食前の祈りを捧げ、スプーンを手にする。
まだ湯気のたつ、変わり映えのしないスープを飲み、堅いパンを千切る。
たったそれだけでも、ゆっくり何度も咀嚼すれば、腹は膨れた。
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