鳥かごと処女
二人だけの、静かな食卓。
あまりに静か過ぎて気まずくなり、亮一郎は口を開いた。

「エメシェ、ここよりマシな飯だといいな。」

その声と、口から出た名前に、セードルフはぼんやりと見つめていたスープから顔を上げる。

「そりゃお城の飯だし、残飯だろうと豪華だろ。」

それもそうかと、納得する。
それから話はレヴェンテの事になり、こんなに静かなら呼べば良かったと二人で笑った。

少し、いつもの空気に戻る。

ホッと肩の力を落とした亮一郎は、再び堅いパンを手に取った。
慣れてしまえば、これが当たり前になる。
白くて温かいご飯がなくても、具だくさんの味噌汁がなくても、いつしか平気になっていた。
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