鳥かごと処女
声を掛けられる雰囲気ではない。

何かをブツブツと呟いている。
よく聞けばそれは、神への祈りのようであり、懺悔のようでもあった。

一体、何があったのだろう。

帰らなかった間に、ただならぬ事が起きた。
それだけは分かる。

しばらくためらった後、亮一郎は部屋から毛布を持ってきて、牧師の肩に掛けた。

寝るときに寒いからと、暖炉の前にあったそれは温かく、牧師はようやく顔を上げる。

目の下にはくっきりと隈が縁取られ、顔色は悪く、まるで別人のようだ。

その変貌に驚いて目を丸くしていると、牧師は顔を再び下に向け、頭を抱える。

「ああ‥‥私はなんという事を‥‥!」

手を組み、何かに許しを請うように、震える声で呟いた。
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