鳥かごと処女
白い息をもらしながら、案内されたのは大きな穴の前。
以前よりも大きくなっている。

こんな閉鎖された城の中で、これほど病が流行るだろうか。


「この者達です。病が親元に持ち込まれると混乱になりますから、ここで内密に埋葬したいと、エルジェーベト様のご意志です。」


フィツコは穴の前に並んだ、何体もの遺体を見せ、悲しそうに眉を寄せた。

あまりにも、言い慣れている。
悲しそうな表情も、わざとらしい。

違和感はどんどん増していった。


「…わかりました。すぐに…」


寒さだけでない手の震えを隠し、用意してきた葬儀の準備に取りかかる。

聖書を読む前に、添えてやれる花が無いので、せめて聖水を授けようと、そっとかけられた布をめくろうと手を伸ばした。


「ああ、牧師様。
この者達の体は、病のせいでただれています。どうぞ、顔だけにしてやってくださいませ。」


フィツコの声は穏やかで悲しみに満ちていたが、射るような視線は隠しきれていなかった。
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