鳥かごと処女
エメシェは彼が元気そうで心底安心し、緊張していた顔を緩めた。
「良かった。貴方が無事で。」
『君が無事で、良かったと言っている。』
通訳が必要なのは仕方が無いが、亮一郎は何となくそれが不満だ。
はやく彼らの話すマジャール語を覚えたい。
その一心で、牧師から本を数冊借りて、安静を言いつけられたにもかかわらず、一日ずっと読んでいた。
負けず嫌いだと親にはよく言われたが、探究心旺盛だと言ってほしい。

「アリガトウ、ワタシ、リョウイチロウ。」

覚えたての、片言。
牧師もエメシェも目を丸くしたが、それも一瞬の事。
すぐに2人は笑顔になり、その笑顔に亮一郎も安心した。
「リョウイチロー、私はエメシェです。」
マジャール語を覚えたての彼に分かりやすいように、エメシェは努めてゆっくり、聞き取りやすいように話した。
「エメシェ、アリガトウ。」
「驚いたな・・・今朝は全く話せなかったと言うのに・・・」
大した勉強家だと、牧師は亮一郎を褒めた。
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