鳥かごと処女
白髪まじりの牧師に褒められると、まるで祖父に褒められているようで、亮一郎の胸は少し切なくなった。

節だらけの手。
目じりの笑い皺。

顔も体型も似ていないのに、何故か錯覚してしまいそうになる。
「この分なら、マジャール語を話せるようになるのは早そうだ!」
「そうですね、楽しみだわ。」
普通に会話をされると、亮一郎にはまだ分からないが、分からなくても耳に入れたい。
耳に入れた会話が多ければ多い程、外国語は早く覚えられるから。
嬉しそうな2人に、亮一郎も少し気分が浮上する。
「そうだわ。リョウイチロー、これを食べて?」
手渡された紙袋を開ければ、パンが一つ入っていた。
「エメシェ、アリガトウ。」
「いいえ。それだけしかなくて、ごめんなさい。」
大飢饉だと牧師から聞いていた亮一郎は、このたった一つのパンがどれだけ貴重か、すぐにわかる。
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