鳥かごと処女
残された亮一郎は、また本を開く。
先程は疲れて寝てしまったが、エメシェのお陰で、意欲がわいた。
ふと、貰ったパンを手にしてみる。

(硬い・・・)

黒ずんだパンは、硬かった。
しかし、これを買うのにどれだけ働かなくてはいけないのだろう。
エメシェの優しさが、身にしみる。
パンを袋に戻して、もう一度本を手に取る。

頑張って、早くもっと会話が出来るようになりたい。そうすれば、エメシェにも
っと感謝の言葉を伝えられる。
助けてもらったお礼だってしたい。
文化になじむには、まず言葉から。

亮一郎はその晩、暖炉の火が消えても、遅くまでマジャール語を勉強した。
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