鳥かごと処女
着替えた後、牧師に続いて教会内を歩く。

『牧師様!』

一人の青年が、石造りの廊下を走ってきた。
「セードルフ、走るんじゃないよ。」
「す、すみません・・・」
セードルフと呼ばれた青年は、人懐っこそうな笑顔を金色の短髪の間から覗かせている。
「その方が、異国人ですか?」
2人の会話は、なんとか聞きとれた。
「私はリョウイチロウです。」
「リョウイチロー!」
昨日よりも流暢なマジャール語に、牧師は驚く。
彼の言語習得能力は、自分の理解の範疇を軽く超えていた。
「僕はセードルフです。ここで、見習いをしています。」
「セードルフさん、よろしく。」
丁寧に頭を下げたら、セードルフは笑って「セードルフと呼んでくれて構わない」と言った。
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