鳥かごと処女
だが、亮一郎のマジャール語は、この2週間ほどでほとんど日常会話に支障が出ないほどとなっている。
だから言い間違えではないとすれば、発言の意図が分からない。

「どうしたんだ、リョウイチロー。」
「・・・セードルフ、俺・・・」

どう説明していいかわからない。
時代をさかのぼってきたとは、彼には伝えていないから。
「もしかして、行き倒れてた時の事、思い出してるのか?」
太い眉を寄せながら、セードルフは亮一郎を覗き込んだ。

少し違うような気もしたが、それ以上に適切な返答も見つけられなかったので、亮一郎は頷いた。
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