鳥かごと処女
マジャール、とは。
一体大陸のどのあたりだろうか。

ラテン語系の言語では無かったし、ましてや聞いた事すらない地名。
チェイテと言う名前がどこの地名なのか。鳥かごに添えられていた地名としか、分かっていない。

何か祖父に聞いたことは、確かだ。
それを思い出そうとすれば、やはりモヤがかかったように、記憶があいまいになる。
(じいちゃん、教えてくれよ。俺、ここで何すりゃいいんだよ。)
祖父の笑顔さえ、思い出せない。
だが、声だけは思い出せた。

“いいか?見つける事が大事なんじゃない。探す事が大事なんだ。”

探す事。
生きるのに精いっぱいで、牧師から言われた“使命”とやらを、探す事さえしていなかった。
(そうだ。探すことから、始めないとな。)
休憩を終わろうと、立ち上がる。
友人とも師とも呼べるセードルフに、色々聞いてみよう。

とにかく今日の分の作業を終わらせて、夕食が終わったら。
亮一郎は気合を入れ直して、寒空の下で作業を続けているセードルフの元へ走った。
< 65 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop