鳥かごと処女
聞きなれてきた声に振り返れば、そこには泥で顔を汚した、エメシェの弟・レヴェンテが居た。
「レヴェンテ、今帰りか？」
セードルフが親しげに声をかけると、嬉しそうにレヴェンテは頷く。
「そうです。姉さんの迎えに。」
「えらいな。」
兄に褒められているような、そんな穏やかな雰囲気。

「人攫いが相次いでますし、この頃物騒だから。」
「ああ、若い女の子ばかり攫われてるし、エメシェも気をつけないとな。」
牧師が言っていた、誘拐事件の事だろうか。

（どっかひっかかるんだよな・・・）

この話を聞いてからと言うもの、亮一郎は頭の中に解けないパズルを仕込まれたような気分になった。
自分でもよくわからないのだが、思い出さなければならない。
それだけは確かな気がしている。

「・・・でも、先日姉さんの所に、チェイテ城からお誘いが来たんです。」

彼の言葉にハッとなって、亮一郎は思考の渕から抜け出した。
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