鳥かごと処女
「・・・エメシェが自分で君と暮らす事を選んだんだ。大丈夫。」
セードルフはレヴェンテの肩に手を置いて、いつも亮一郎を元気づけてくれる、あの力強い笑顔を見せた。

彼の笑顔には、力がある。

天性のものなのかもしれないが、セードルフが“大丈夫”だと笑うと、大丈夫だと思えるのだ。
「ありがとう、セードルフさん。」
礼を言われるような事はしていないと、セードルフは照れ臭そうに笑った。

「そうだレヴェンテ、今日は亮一郎に色々聞かなくてもいいのか?」
話を変えたいのだろう。
セードルフは半ば無理やり、亮一郎に話を振ってきた。
「あ、聞きたいです!俺、食べ物の話とか、すっごく興味あって!」
「スシとか、トーフとか、聞いた事の無いものばっかりだもんな。」
俺も興味があるんだと、セードルフも聞きたがる。
異文化交流というのか、新大陸を発見した偉人達は、こんな気分だったのだろうか。
「豆腐・・・か。レヴェンテ、農園で大豆作ってるって言ってなかったか?」
「はい、作ってますよ。不作ですけど。」
困ったように笑うレヴェンテに対して、地雷を踏んでしまった気分になる。
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