鳥かごと処女
逃げたいのに、体が動いてくれない。
それどころか、またも勝手に近付いて行く。
(嫌だ・・・嫌だ!)
泣き叫ぶ女性を助けると言う選択肢は、パニックに陥った亮一郎には無い。
自分だって泣き叫びたいぐらいだ。

「やめんか!」

声が、自分の声ではない。

「あら・・・ネズミさんが一匹、迷い込んだのね。」
「やめろ。エリザベート!」
(エリザベート?)

あの、鳥かごの持ち主。
それに、この声。
(じいちゃんの声だ・・・!)
まぎれも無く、憧れの祖父の声。
< 83 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop