一万回目のプロポーズ
冷たくてベトベトしてなんか甘い匂いのした何かがかけられた。

「・・・ごめ~ん、手が滑っちゃった~。大丈夫ぅ?琴音~」

こりゃまたぶりっ子で来た知紗さんじゃないですか。

知紗の手元には紛れもなく私にわざとかけたコップがこっちを向いていた。

これ、お気に入りの服なのにな・・・。

あーあ、髪もベトベト。

「大丈夫かっ!?佐藤!」

おそらく誰も見てない。

知紗がかけたことを誰も見てないだろう。

「ちょっ!あんたなにやってんのよ!私は見たの!こいつが・・・琴音にジュースをかけたところ!」

「おいおいマジかよ・・・。知紗ちんがんなことするわけがないだろ~(笑)」

半分の男子はそう言った。

私はうつむいて泣いた・・・。声を殺して。

「・・・っ着替えてきます・・・。」

私はガタッと席を立って廊下に出た。

なんで・・・、なんでこんなふうなの・・・。もっとほかに手はなかったのかな・・・。

「・・・っ」

私はその場で涙を流した。

そして私は歩いて部屋に戻ろうとする。

「そっちは部屋じゃねーぞ?」

後ろから声がした。

「・・・・。」

私はUターンした。

「・・・。」

そして瞬の前を通り越す。

「・・・待てよ」

捕まってしまった。

「・・・・離して」

私は小さめの声で言った。

「はなさない。」

「・・・っ!離してよッ!」

私は手を振り払った。

「もう・・・いいかげんにしてよ・・・どんだけ私を振り回せば済むの?」

「どんだけ私を弄んだら気が済むの?」

なんでいつもいつも・・・惑わすようなことをすのかな・・・。

それがかえって逆に苦痛なんだよ・・・。

「・・・なにしてるの?」

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