【短編】寝ているアイツにキスをした。~柚子side~
誰か教えてよ。
諦めたほうがいい??
でもムリだよ。
諦めるなんてあたしにはムリだよ。
そんなことできるわけない。
だって……だってあたしには、樹しかいないから。
樹がそばにいてくれなきゃ、あたしダメだよ。
樹がいないとなにもできないの。
「っ……樹……」
やり場のない想いだけが、あたしの体の中を張り巡らす。
苦しくて仕方ない。
「柚子、帰るぞ」
放課後は、いつも通りに樹がくる。
でも今のあたしは、樹の顔を見るのさえ辛かった。
だって、樹の気持ちを知ってしまったから。
もう、今までみたいにうまく接することができない。