first love【完】
「咲希…ほんと……」
何も言える言葉が見付からず、腕に力を入れて抱きしめると、初めて、遠慮がちに背中から腰辺りに咲希の手が触れた。
しばらくそのままに抱き合っていたら…
「ん、ゴホンッ…」
後ろからわざとらしい咳払いが聞こえ慌てて離れて、咲希を背にして振り向いた。
「いやぁ…ラブラブのとこ、
ほんっと申し訳ないけど、さ…」
そう話す真人の後ろには部員勢揃い……
「な、なに?」
さすがに赤面してしまう。
「ほら、俺らも、咲希ちゃんに
お礼に来たわけ…
どうみても、咲希ちゃんがかなり
頑張ってくれてるっしょ?
こ、れ、」
お守りをみんなして見せながら頷く。
「って訳で、咲希ちゃん。
悪いけど、ちょ~い、顔出して?」
すると、会話が聞こえていた咲希は、モジモジっと俺の背中から出てきた。
「咲希ちゃんっ!!
ありがとう!絶対、勝利を
プレゼントするから。じゃ、みんなぁ」
「「「ありがとうございましたっ!」」」
運動部らしいそろった声のお礼が中庭に響いた。
咲希は真っ赤になり照れていたが、とにかく嬉しそうな顔で「頑張って下さいね」といってた。
ほんわか、温かい気持ちに包まれて、家へと帰った。