first love【完】
「ねぇ、それ…逆に傷つけてるって
わからない?」
少し冷たい声で新田さんが俺に言う。
「なんでさ、俺は…」
「へぇ…じゃぁ、桜井君は
咲希に関することを他から自慢げに
聞かされても、嫌じゃない?
自分は一緒に居たくないのかなとか、
不安に思うこともない?」
そう言われて想像してみる。
胸がモヤモヤして、痛い…
「あ……」
「直ぐにでも話し、しないと
お節介な女子に傷つけられるよ?
まだ、二人を認めないって
息巻く先輩とかいるんだよ?」
また、やってしまった…
自分の側からの考えだけで、咲希を思いやらない俺。
咲希の誕生日で懲りたはずなのに。
時計を見るとあと、2、3分。
新田さんにも声をかけずに咲希のクラスへ走る。
「咲希っ!」
いきなり廊下から呼ばれた咲希は驚きながら、席を立ち俺の方へ駆け寄る。
「な、なぁに?」
恥ずかしそうに赤くなりながら下から見上げてくる。
うっ…可愛い……って、それどころじゃなかった!!
「咲希、クリスマスイブな、俺
誕生日なんだ、一緒に、居てくれる?」
咲希の耳元に唇を寄せてささやくように話すと、くすぐったそうにしながら、口元が笑顔になるのが見えた。
「うんっ…ありがと…」