first love【完】
そんな大きな声ではなかったが、見学者には十分聞こえて、同じ扉側にいる生徒が一斉にこちらを見た。
そして、「あの子…桜井君の…」なんて言ってるのが聞こえてきた。
バスケ部員も、チラチラっとこちらを見ている気がした。
緊張と恥ずかしさで顔が上げられずにいた。
すると、周りの空気がザワッと動いた気がした…その時、頭の上に温もりを感じた…。
思わず顔を少し上げると、目の前には優しい笑顔で私を見つめる桜井君が居て、彼の右手は私の頭を撫でてる。
「今日も見に来てくれたね
ありがとう♪
もし6時まで平気なら待ってて?
一緒に帰ろう」
緊張のあまり声が出てこなくてただ、首を縦にコクコク振るのが精一杯…。
「おらぁ~、竜!!
彼女来てるからってサボるなぁ!!」
後ろから大声で呼ばれ「やべっ!」と苦笑して軽く手を上げて中に戻っていった。
私は真凛ちゃんに「ここから出たい」とどうにか伝え、「了解」と言った真凛ちゃんと共に中庭まで出てきた。
頭を撫でてくれた温もりがまだ、感じられて…無意識に水やりを済ませてから中庭の隅にある小さなベンチに座り込んだ。
真凛ちゃんはそんな私の隣に腰を下ろし「大丈夫?」と聞いてくれた。