first love【完】
「咲希ちゃん…イヤだった?
最前列。なんか、ごめんね。
目立つのとか、苦手なんだよね?」
私を責めずに優しい声で、気遣ってくれる。
「えっと、うん、…確かに
目立つのは…苦手
でも、真凛ちゃんのお陰で、
帰りの約束…出来たし、ありがとう」
「そう?よかったぁ」
今までは自分の考えや想いを伝えなくてはいけないと、強く思ったことはなかった。
勘違いされてしまっても、それを受け入れてしまっている自分がいた。
でも、桜井君と中庭で付き合うと決まった時からたった1日で、特に桜井君に関わることは、誤解されるのは嫌だって強く強く思ってる自分がいる。
恥ずかしがりでうまく言葉に出来なくても、桜井君は受け入れてくれた。
それが、無意識に心の支えになって、私に変化をもたらしてくれたみたい。
真凛ちゃんも、ついさっきまではただのクラスメイトとして接していた。
私が感じていた周りとの隔たりは実は私が作ったもので、“ありがとう”と素直に思ってみれば、その壁も薄れていき、クラスメイトから友達に変化した気がする。
私はうまく言葉には出来ないが、なんとも言えず嬉しさがこみ上げて、自然に笑顔になっていた。