first love【完】
戸惑い*
“言われてない…”咲希side
“咲希”と呼びたい…
お昼の時から少しは予想出来た展開。
私が“竜斗君”と呼べるのはまだまだ先のはなしだが、呼ばれるのは…ドキドキソワソワ落ち着かないが、悪い気はしない。
だから、周りの視線や、恥ずかしさを考えたけど、なに一つとして、桜井君を喜ばせてあげられてない今の状況で、嬉しそうに言ってきた名前呼び…
これを承諾したら、ほんの少しは喜んでくれそうだったし、なにより、彼氏彼女って雰囲気が出そうで、私もどっか、喜んでる自分に気がついていた。
だから、「はい」って返事した。
「マジ!?いいの!?
うわぁっ、嬉しい…ありがと…
咲希…」
飛び上がらんばかりの喜びように、あぁ、良かったと安堵したのもつかの間、“咲希”と呼ばれて、私の心臓は…離れていても鼓動が桜井君に聞こえそうなほどに一気に暴れだした。
一人あたふたする私を見て、柔らかい笑顔をしながら、また、頭をポンポンとしてくれた。
恥ずかしかったけど、なぜか、安らげた。
それから、改札を通りホームに向かう桜井君が、見えなくなるまで見送り私も、5月の爽やかな風が吹くなか、自宅へと帰った。