first love【完】
伝わる*
「ふざけんな」咲希side
「ふざけんなっ!」
兄と一緒にパン屋から出たところでいきなり目の前に現れた男子に怒鳴られた。
「あぁ?
お前っ誰に向かって言ってんだ?!」
すかさず兄が私の前に、庇うように立ち、いい放った。
「その女に言ってんだよっ!
お前はかんけ~ねえから
どいててくんねぇかなぁ…」
人通りの多い駅前で、いきなりの怒鳴り合い…。
私は怖くて兄のシャツを掴んで俯いてしまった。
「森田、待てって…
星谷さん、俺、中野だけど
顔…上げてくれる?」
聞いたことのある声が私を呼んだ。
私が顔を上げるのと、兄が「てめぇら…咲希の学校のやつらだよな…」と言い終わるのは、ほぼ同時だった。
前を見ると…確かに中野君が困ったような顔をして私を見ていた。
「な、中野…君…
私…えっと、この人に何か…
してしまったんでしょうか…?」
「いや…こいつらじゃなく…
竜…かな」
「えっ!?どうしよう!?
桜井君…どこ、ですか?
私…何してしまったんですか!?
あ、ぁ…お兄ちゃん……」
すでに涙声になりながら、オロオロと桜井君を探すため辺りを見るが、見当たらずに兄に思わずすがってしまった。