first love【完】
「あっ…」
引っ張られながら、一生懸命に走る咲希。
「あと少しだから、頑張って」
声をかけながら走り、どうにか予鈴前に校舎内に滑り込んだ。
靴箱のところで息を整えてる咲希に何となく気まずさを感じて、「昼な」とだけ言って先に教室へ向かった。
…*…*…*…*…*…*…
一時間目が終わると俺はクラスのバスケ部員、森田にいきなり教室から連れ出され廊下の人通りの少ないところまできた。
「すまんっ!!」
膝に頭が着きそうなくらい下げて、謝りだした森田に「何が?」と聞けばガバッと頭をあげて「聞いてないのか?」と言われた。
そして携帯が電源落ちしていて、昨日から誰とも話してないと言うと「そうか…」と沈んだ返事をした。
そして、早口で俺が帰った後の騒ぎを話してくれた。
なんと、“お兄さん”だったとは…。
俺は大きな勘違いをしてしまったわけだ。
朝の咲希…“怒っているか”聞いてきたのは、俺が、勘違いしたのを知って、そうさせたことを怒っているか、ということなんだろう。
考え込んでると「ヤベッ、チャイムなったぞっ!!」と森田が叫び、一先ず教室へ戻った。