first love【完】
『認めない』咲希side
ハンバーグのお弁当を美味しいと食べてくれて、今日は一緒に帰ろうと約束したところで時間切れ。
私の中には、昨日のことは誤解が解けて喜んでいる自分と、その前に気がついた“好き”を言われてなくて不安な自分と…心の中でざわついていた。
…*…*…*…*…*…*…
教室を出ると、すでに廊下で待っていてくれた桜井君が、数人の女の子に囲まれていて、私は声をかけることが出来ずにいた。
私の後ろから出てきた中野君が、「竜っ!」と大きな声で呼びつけると、桜井君は戸惑うことなく、「おぅっ!」と手を上げて輪から出てきた。
離れられてしまった女の子達はそれでも「竜斗君」「桜井君待って」…など声と共に後ろから迫ってくる。
中野君は桜井君を通り過ぎ、女の子達に向かって「ねぇ、みんなさぁ~」なんて声をかけている。
その間に桜井君は私の手首を掴み「行こ」と小さく言って階段の方へ歩き出した。
後ろからまだ「ちょっとぉ~」「桜井君…」なんて聞こえてたが、振り返らずただ桜井君についていき門を出ると、ホッとした。
「あぁ~喉乾いたぁ♪」
「あ…はぃ…私も」
「おっ!気が合うなっ♪
じゃさ、駅前のファミレス行く?」
「はい…」
桜井君の手は、私の手首を離して直ぐ、手を繋いでくれ、ゆっくり歩き出した。