幸せの選択
「鍋嶋さん、彼女具合が悪いみたいなんでタクシー乗せてきます」


そう言って素早く私の腕を引いた


あっという間のことに、ポカーンとしていた鍋嶋が「おい!」と呼び止めた時には、もう出口だった。



「走れる?」


そう聞いて、返事をする前に走り出す。



いつの間にか繋がれた手を引かれ、師走の街を駆ける

人混みを上手くかき分け、走り着いたのは静かな路地裏だった。


「ここまで来れば大丈夫でしょ」

はぁはぁと息切れして話せない私とは対照的に、余裕な彼は「それと、これ」と言って携帯の電源を切った


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