幸せの選択
大きく息を吐いてから、

「三島と申します。金沢さんと19時にお約束をさせていただいてます」


震える声でそう言うのが精一杯だった。


私の緊張を、知ってか知らずかその女性は先ほどよりも柔らかい声で「只今そちらに参ります。掛けてお待ちください」と言って切った。



広いエントランスに一人、掛けて待つなんてできなかった。


フゥーと目的もなく視線を泳がせる。


外の人たちは家路を急ぐように歩いている。
私は、今なぜこの場所に自分がいるのかを思い出していた。


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