幸せの選択
課長は、もう何も言わなかった。
でも、握られた手は離されることはなかった。
間もなく、見慣れたはずの建物が見えた。
もう何年も住み続けた自分の家なのに、随分久しぶりに来たような気がする。
下から見上げる自分の部屋の窓に明かりが点いていないことを確認すると、全身に張り巡らされた緊張の糸がプツンと切れた。
「大丈夫か?」
「はい。車、ここに置けないんです。この先に少し道が広くなったところがあるんですけど、そこで待っていてもらっていいですか?」
「いや、俺も一緒に――」
「大丈夫です。電気点いてないので、きっといないと思います。もしいたら中に入らず戻ります」
一緒に行くという課長を遮って車を降りた。
「三島、10分で戻ってこい。もし、戻ってこなかったらその時は俺が行くから」
でも、握られた手は離されることはなかった。
間もなく、見慣れたはずの建物が見えた。
もう何年も住み続けた自分の家なのに、随分久しぶりに来たような気がする。
下から見上げる自分の部屋の窓に明かりが点いていないことを確認すると、全身に張り巡らされた緊張の糸がプツンと切れた。
「大丈夫か?」
「はい。車、ここに置けないんです。この先に少し道が広くなったところがあるんですけど、そこで待っていてもらっていいですか?」
「いや、俺も一緒に――」
「大丈夫です。電気点いてないので、きっといないと思います。もしいたら中に入らず戻ります」
一緒に行くという課長を遮って車を降りた。
「三島、10分で戻ってこい。もし、戻ってこなかったらその時は俺が行くから」