幸せの選択
「弘之……」



数歩先の弘之は、最後に見た時と全く印象が違う。


カチッとしたスーツを着て、片手に書類ケースを持つ彼は、数年前の新入社員だった頃を思い出させた。




同時に、弘之が大好きで、必死で彼を追いかけていた自分も思いだして、キュンと胸が締め付けられる。


「仕事?」


「あ、うん。弘之は?」


「俺も仕事」



書類ケースをポンと弾きながら『仕事』と話す弘之の顔は、私が大好きだった頃の優しい笑顔だった。

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