幸せの選択
そこまで言ってハッと口を閉じた。



『言ってくれてたら』どうしたというのだろう。


もしも言ってくれていたら、あの空虚な生活が何か変わっていたのだろうか?
もう少し我慢できたのだろうか?



いくら自問したって、『もしも』なんて答えが出るわけもなく、フルフルと頭を振った。




弘之を好きになったこと後悔はしていない。
だけど、もっとお互いをさらけ出していたら、今とは違った結末が迎えられたかもしれないのは、後悔している。



後悔だって『もしも』の話で、あの頃の私にはこんな後悔をするなんて思ってもいなかったんだけど。



考え事をしていたせいで、いつの間にか俯いていた私の頭上に弘之の声が降ってきた。


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