幸せの選択
携帯を当てている耳からは、機械を通した晃樹の声がする。
反対の耳からは、聞きなれた晃樹の声がする。



磨りガラス越しに見えるシルエットの人は、携帯電話を耳に当てて誰かと話をしている。


そして、片手に持っていた煙草を捨てて、出口へ向かう。







「ヘヘヘ……待っちゃった」


喫煙室から出てきたその人は、携帯の終話ボタンを押して私の下へ近づいてくる。




「もう!帰るって言ってたじゃない」


「うん」


「こんな時間まで……」



「だって、待ってるって言ったら千秋仕事に集中できないでしょ?」


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