幸せの選択
「あれ?千秋怒ったの?ごめんごめん」


なにも言わない私のことを、勝手に怒ったのだと思い込んだ晃樹は、両手を合わせて謝っている。



「別に怒ってないよ。さぁ、早く戻らなくちゃ」





そしてビルの中へ入った。


あまり使う人がいない出入り口のため、エレベーターは晃樹が乗ってきたまま留まっていたようだ。


私は、ボタンを押して開いた扉の中に入る。

振り返ると、煙草の火を消して乗り込もうと走ってくる晃樹の姿






私は、すぐに「閉」ボタンを押す。






「えっ?」と驚いた顔の晃樹の顔が扉の隙間から段々小さくなっていく。








閉まる直前、ベーッと舌を出した。
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