大切なもの
1人私は急いで靴箱へ向かった。
…少しでも人がいない所に行って気持ちを落ち着かせたかった。
「慎二ー…早く来ないかなあ」
とその時、
「小川っ!」
「あっ、慎二…」
慎二がこっちへ向かってくる。
「で、小川何?」
「あっ…あ…もうちょっと人いないところいこう?」
慎二が来たと同時に、たくさんの帰る人たちがこっちにきてしまった。
明日から夏休みだけあって、みんなうるさくて、とても気持ちなんか伝える気分にはなれなかった。
「うん、わかった。あんまし遠く行かんでよ」
「わかってる。あ、理科室の手前らへん…」
ここよりまだそこの方が静かでいい。…そう思った私。
…移動していたその時、
「し~んじっ~♪」
「あっ!松田。」
「えっ!?」
そう、急に結衣ちゃんが登場し、慎二に話しかけた。
「えへへ~明日から慎二と会えなくなって寂しいよお」
(でたっ!この男を眩ます笑顔っ!!!)
…そして
「ああ、そうやなあ。」
慎二もいつも以上の笑顔で返す。
「なんでウチら違うクラスなんだろうねえ~」
「そうやな」
「慎二は明日から部活なんやろ~?」
「うん、そうで」
…私は2人が話している姿を見るのが耐えられなくなって、ついに話しに割り込んでしまった。
「あのっ、結衣ちゃんっ。私、慎二に話しあるから…いいかな?」
そう言うと結衣ちゃんは私を無視して、
「ウチも、明日から早速部活あるんやけど、すっごくキツイよなあ~」
「そうやな…」
慎二はこっちを気にしながらも結衣ちゃんと話している。
「しかもさあ~文化部はいいよね!ウチらみたいに部活出る日多くないから~しかも超楽だし~~~」
…私は合唱部。
私は音楽系でメジャーな吹奏楽部に入りたかったけど、東中は吹奏楽部がなくて、断念して合唱部に入った。
でも、3歳からやってたピアノも譜面読みでは生かされてるし、今ではすごく歌うことが好きだ。
8月のコンクールのために必死に練習もしている。
…それなのにこんな言い方されて怒りがこみ上げてきた。
「…慎二こっちきてっ」
私は半ば強引に慎二の手を引っ張った。
「あ、んじゃあ松田バイバイ」
「慎二いー!またねえ☆」
私は、早く先に帰れよ、って不覚にも思ってしまった。
……頭の中に怒りしかない。最悪っ…