大切なもの
次の日の8月6日。


登校日であり、ドキドキしながら学校へ向かう。

(え、これ慎二つけてきてくれてるんかな…?つけてきてても照れくさいし、つけてなくてもへこむ…)


そう考えながら1-4の教室へ足を運ぶ。


「おはよ~久しぶり!暑いね!!」


そんな声が飛び交いつつ、私は慎二の姿…というより慎二のエナメルバッグを探す。


「おはよー小川!!」


慎二が入ってきた。


「慎二おはよう!」


と言った同時にチャイムが鳴る。それと同時に担任が入室。
うるさかったみんなも席に着く。

(慎二がつけてくれてるか一瞬だったからわかんなかった…まあまたあとで見よう)


そう思い短いHRを終わらせ、帰りの時間。


「慎二~部活行くぞ~」


「お~う!」

あっという間にサッカー部員から慎二が連れ去られそうになる。

(ええ!!確認すらできないうちに慎二が部活へ行ってしまう!!)
 
ちょっと追いかけて一歩踏み出した、その時




「そういえば、小川!」


「ふぇ?」

追いかけようと全力で行こうとした瞬間、慎二に振りかえられ、ちょっと拍子が抜けてしまった。


慎二は、笑顔でエナメルバックの右端についているサッカーボールのキーホルダーを指さし、


「これ、俺の白に黒ラインのエナメルにめちゃくちゃ合ってて、超気に入った!昨日わざわざありがとう!何かつけてみたら、改めていいなって感じた!じゃあ部活行ってくるな!また!」











…そう急いで言って部活に行った。


好きな人に自分があげたキーホルダーをつけてもらえるだけで嬉しいことなのに、

その上気に入ってもらえて、わざわざ部活に行こうとしてたのに、振り返って言ってくれて…


思わず教室の中でニヤけてしまった。


「「ゆきちゃん~?何にやけてるん???」」


他のクラスも終礼が終ったらしく、合唱部で有名の美人の双子、秋山香奈(あきやまかな)、真奈(まな)が1-4に入ってきて、そう問われる。



「ううん!なんでもない!!!!!」



終始顔はニヤけっぱなし。隠せてない嘘を言う。



「「ふぅ~ん、まあいいや、うちらも部活行こう!」」



美人の双子も何か汲み取ってくれたようだ。



「よっしゃー!!!!!今日はどこまでも高い音域が出せる!!!!!!オペラは任せろ!!!!」


「オペラじゃなくて合唱部やしゆきちゃんアルトやん。どこまでも低い音出しとけ」


「それは今の私には似合わないってことよ!!!」



よくわからない高いテンションで、大好きな仲間と部室へと向かった。



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