大切なもの
…慎二の視界に入った瞬間に話しかけられた。


「小川!!久々!!!」



久々なのに相変わらずの笑顔。


相変わらずの元気。


…なんであたしはこんなに好きな人を信用出来てなかったんだろう。


どうしてこんなに不安だったんだろう。


そう自分を軽く責めた。



「慎二~、久々。」



…慎二のエナメルバッグの右下に目を落とすと、サッカーのシンプルなキーホルダーがついている。


(…ついてるっ)


誰もあたしがあげたものってわかんないけど、あたしはあたしがあげたって知ってる。


別にキーホルダーに“ゆき”って書いてるわけじゃないけど、すごいあたしがあげたものをつけているっていうのが嬉しかった。


何も知らない人から見たら、慎二はサッカー好きだから、ただのサッカーのキーホルダーをつけているとしか思えないだろう。


自分と、慎二だけが知っているこのキーホルダーの意味。




「夏休み後半ごめんな!って謝るのもおかしいか…でも練習試合で南中学校ばーーーーーーーっかり行ってたんだよ、本当なんか申し訳ないというかなんか…」





(…まあ慎二はキーホルダーの意味を深く考えていないだろうけど。しかもまあ楓ちゃんと葵はあたしがあげたって知っているしね(笑)



「謝る必要なんかないよ!しかもばーーーーーーーっかりって伸ばす意味(笑)ちょっとなんでこんなに会わないかは気になってたけど。」


「だって本当に毎日行ってたんだもん!」




久々だと恥ずかしいけど……話せることがとてもとても嬉しい。




「いいってば♪わざわざ今日一番に言ってくれてありがとう。」



その瞬間、チャイムが鳴る。


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