大切なもの
…次の日の4月8日。


「やっぱスカート長い~~!!!制服ださい~~~!!あーもう嫌」


洗面台で髪を2つ結びにしながら、罪のない制服にも愚痴る私。



「しかもさあ…なにあの静かすぎるクラス!!!最悪っっこれから先どうしようっ」














そう思いながら家を出ると、玄関先には



「おはよう。ゆき」


葵(あおい)だ。


葵はぽっちゃり体型で、おっとりしすぎてて嫌なときもあるけど、私の中で、「いないとダメになる存在。」


私の話を何でも聞いてくれて、気を遣わない相手。


家がとても近所で、小学校の頃も一緒に行き帰りをしていた。


もちろん中学も一緒に行く約束をした。


あと、一緒に合唱部に入ろうとも約束した。


「ゆき可愛い♪」


「葵も可愛いよ!」


ちょっとだけお世辞。



でも、私より10センチ以上長い髪で二つ結びをしていて、


その上制服を着ている。


微妙な大人っぽさはあった。


「じゃあゆき行こう!」


「うん!」






…そうして色々会話をして学校に着いた。


葵は里愛と同じ6組。


1、2、3、4組は北校舎で5、6組は本校舎。



だから校門でお別れ。


「ゆき!帰りも待ってるからね~」


「うん」



私は葵と別れた後、少し小走りで4組へと行った。


一人が不安だった。


早く4組に行って渚に会いに行こう。そう思ったから。









私が4組の前に着いて、ドアをあけると、



私の後ろの席の、墨谷小出身の山崎(やまさき)さん、星野(ほしの)さん、植田(うえだ)さんが3人で固まって楽しそうに話してる以外、みんな席についてシーンとしていた。


私は、もうグループできたんだあ…早くていいなあ。と思うだけだった。


でも、その3人は同じ小学校出身で、ましてや席が近い3人。


仲が良くないほうがおかしいよなあ………そう思って自分に言い聞かせていた。





…でも楽しいことが好きな私にとって、私の真後ろで女の子3人で話してて、自分は席について大人しくしているのが嫌だった。


しかし固まっていて楽しそう喋っている3人に話しかける勇気もなく、授業前の朝の時間は過ぎていった。
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