【短編】絡まる糸
右手は自然とリョウの腕に誘導され、そっと腕を絡めると、つき合ってるかのような錯覚に陥るときがある。


今日はいつもと歩く道が違うから、余計に不思議な気分だ。



「俺が好きな映画の話、覚えてる?」

「あ、うん」


「その監督の昔の作品が映画館で特別上映されるらしいんだ。それを一緒に観よう?」

「……うん」


こんな風に、普通の会話をしていることが不思議でしょうがない。




ホテルに入って、身体を重ね、熱を共有することこそが、あたしたちの普通だと思っていたから。
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