禁断の果実
好きだって言うのは本当にとてもよく分かる・・・。
あのメロディと歌声はそう簡単に誰でも作れるもんじゃない。
あたしもピアノやってるからよく分かるんだ・・・。
「あの・・・・」
「ん?」
「どうして音楽の先生にならなかったんですか?」
そんなに好きならどうしてならなかったんだろう?ってあたしは疑問になった。
その方が好きな事を生徒に教えられるのに・・・。
先生はあたしから目を逸らし、窓の外を見つめた。
「・・・教えるのは好きじゃなかったから」
・・・・・どういう事?
あたしには先生の言っている意味が理解出来なかった。
教師と言う立場は生徒に勉強を教えるためなのに・・・。
あたしが怪訝な顔をしていると、すぐにまたあたしの方に視線を合わせ
頬杖をついて、ふっと笑った。
「そのうちな」
そのうち・・・教えてくれるって言うことなんだろうか?
でもそんな疑問よりも、あたしの心臓がうるさくて
これ以上何も聞けなかった。
何だか、先生とこんな風にほんの少しだけだけど
2人で過ごせて、距離が近くなった気がする。