禁断の果実
「・・・・・お前なら・・・あいつの傷、癒してくれると思うから」
「・・・・・・・え?」
傷?
あいつって和泉先生の事だよね?
あたしの知らない所で、和泉先生には何かあるの?
「・・・・・・なーんちゃって」
今井先生はあたしが少し不安な顔をしていると、すぐに表情を崩し、冗談だよと笑っていた。
「もうっ!!先生!!」
またからかわれた・・・その時はそう思ったけれど、きっとあたしの心のどこかで今井先生の言った事が刻み込まれていたんだ。
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旧音楽室で和泉先生と2人の時間を過ごしたあの日から、翌日も翌々日も毎日そこへ向かっている自分がいた。
先生は笑顔で迎えてくれて、必ずお茶を出してくれる。そして今日も旧音楽室へ向かった。だけど、先生の姿はなかった。
「・・・・・先生いないんだ・・・・残念」
少しガクッと肩を落として帰ろうと思ったけれど、何となくその部屋に一人で入った。