オトナのキュンラブ†堕落~人でなしの恋†『色悪』シリーズ
凌は少し目を細め、そんな私を見ていた。
電話の無機質な呼び出し音が空気を震わせて鳴り響く。
「でないのか?」
「んンっ…!」
身じろぎをした凌に胎内を擦られて、私は凌の首筋に額を押し当てた。
呼び出し音はカチリという音の後、留守番電話に切り替わった。
『綾音?もう眠ったのか?』
電話のスピーカーから流れ出した彼の声に私は凍りついた。
『俺は今家に帰りついたよ。
変だよな…さっきまで会ってたのに綾音が恋しい…---
早くずっと一緒にいられるようになりたいな。
愛してるよ。
---じゃ、また…
おやすみ』
部屋に静けさが戻り、私は凌の首筋からゆっくり頭をもたげる。
凌は唇の端にいつもの歪んだ微笑みを浮かべて私を見つめていた。
「優しい彼だな」
凌は私が罪悪感に苛まれれば、さらにいたぶって楽しむつもりなのだろう。
「今の綾音の姿を見たら傷つくだろうな」
自ら彼以外の男の上に乗り、彼以外のものを体の奥まで欲深くくわえこむ浅ましい女。
そんな女だと知っても彼なら私を責めたりせず、ただただ一人で深く傷つき悲しむだろう。
そんなふうに優しい人。
でも私が欲しいのは彼じゃない。
私は凌引き締まった腹筋の上に両手をついた。
人でなし------
凌のような人でなしをどうしようもなく愛してしまった私も人でなしだ。
私を愛してくれている優しい彼、両親、友人、仕事仲間------
こんなふうにとことん堕ちてしまった私を彼らは軽蔑するだろうか?