オトナのキュンラブ†堕落~人でなしの恋†『色悪』シリーズ
1ヶ月前---
彼にプロポーズされ、私はそれを受け入れた。
トントン拍子に話は進み、お互いの家族とも顔合わせをし、会社にも報告して大いなる冷やかしと祝福を受けた。
幸せだった。
幸せのはず。
そうでなければいけない。
あと3ヶ月もすれば私は彼と同じ姓になるのだから。
雨足がすこし強まった。
「いつまでもこうしていたいけど…雨がひどくなる前にお帰り」
彼の手が私の肩を包んで、静かに身を引いた。
「うん。送ってくれてありがとう…気をつけて帰ってね」
「ああ。綾音も風邪を引かないように暖かくして寝るんだよ」
彼の手がくしゃりと私の頭を撫でた。
「じゃ、また」
私は小さく微笑んでから車のドアを開け、一瞬雨の受けてすぐマンションのエントランスへ駆け込んだ。
振り返ると、彼が応えるように二度パッシングしてから車を発進させた。
勢いを増してくる雨に、テールランプがかき消されるまで見送る。
優しい彼。
私のことだけを愛して、大切にしてくれている…