オトナのキュンラブ†堕落~人でなしの恋†『色悪』シリーズ
今や雨は嵐のような激しさだった。
部屋のドアの前に立った時には、雷鳴が鳴り響いていた。
私は鍵を開けて部屋に入ると、暗がりのなかでパンプスを脱いだ。
カッ!
一瞬の稲光が、正面の窓から部屋の中を照らす。
「ヒッ!」
ソファーの上に映し出された人影に、私は息を飲んだ。
稲光に遅れて雷鳴が部屋を揺らす。
再び走る稲光。
暗闇に慣れ始めた目が、今度はハッキリ人影を捉えた。
「リョ、ウ…---?」
雷鳴のなか、私が震える指で照明のスイッチを押すと---
パチリと音を立てて間接照明の淡い光が灯った。
「どうした?幽霊でも見たような顔だな」
半年ぶりに聞く凌の声は意地の悪い笑みを含んでいた。
両腕を広げてソファーの背に預け、長い足を自堕落に投げ出した姿。
現実離れした、際立った美貌。
オニキスのような暗い輝きを放つ目と、その下の小さな泣きぼくろ。
私が、かつて愛した男---
「…凌、どうして…」
なぜ半年前いきなり私の前から姿を消したの。
なぜ半年もの間、姿を見せなかったの。
なぜ今になってここに現れたの。
私は言葉を続けることが出来なくなって、茫然と立ち尽くしていた。