恋とくまとばんそうこう
♪♪♪…♪
柔らかいピアノの音に声を乗せながら澄香は一年の時を思い出した。
…入学して一週間したある日、前の席のイケメン君が突然坊主にした。
お洒落とは程遠い完全な坊主に、毎日色めき立っていた周りの女の子達からは真逆の悲鳴が鳴り響き、その日を境に騒がしかった前の席は秋のように静かになった。
正直、毎日キャッキャッ聞こえてくる黄色い声がやんで、澄香はホッとしていた。
前の席の彼にそれほど興味はないし、休み時間は出来るだけ静かに過ごしたい。
かといっていつでも騒がしい前方を注意する勇気もない。
そんな感じだったので、悲鳴の嵐から何時間かして澄香は初めてマジマジと前の席の人物を見つめる事になった。
うん、まぁ、確かに背中だけでも格好いい、かな。